土木関連工事におけるアスベスト事前調査の境界線:その土木構造物は義務対象か?

公共事業を担うゼネコンや行政の安全担当者の皆様、日々図面や現場と向き合う中で、ある「隠れた課題」に頭を悩ませていませんか。

それは、「今回の工事対象となる土木構造物が、そもそもアスベスト事前調査の義務対象になるのか分からない」という問題です。

ビルや学校といった建築物であれば、調査が必要なことは広く認知されています。しかし、橋梁、トンネル、擁壁、地中の上下水道管など、公共工事で扱う対象は特殊なものが多く、労働安全衛生法(安衛法)や大気汚染防止法に基づく事前調査の対象かどうかの線引きが非常に複雑です。

担当者は「この水道管の撤去作業は、工作物の調査対象になるのか?」「一部だけ補修する道路工事でも必要なのか?」といった疑問を持ち、積算担当者や現場の管理者を悩ませる大きな要因となっています。

■ 安衛法・大気汚染防止法における「工作物」の定義と調査義務

安衛法(石綿障害予防規則)および大気汚染防止法では、建築物だけでなく、工作物の解体や改修作業を行うときも、あらかじめ石綿の使用の有無を調査しなければならないと定められています。 ここでいう工作物とは、建築物以外のものであって、土地、建築物又は工作物に設置されているもの又は設置されていたものの全てを指します。

■ 調査対象となる工作物と、対象外の境界線

では、公共工事で頻出する土木構造物は具体的にどのように分類されるのでしょうか。

・上下水道管について 配管設備として事前調査の対象(特定工作物)となるのは、炉設備等と連結して使用される高圧配管、下水管、農業用パイプラインなどです。一方で、上水道管については調査対象から除かれています。このように、同じ地中の管であっても用途によって明確に線引きされています。

・トンネルや擁壁について トンネルの天井板は、特定工作物として事前調査の対象となります。また、コンクリート擁壁や電柱、公園遊具、仮設構造物などは「その他工作物」に分類され、塗料その他の石綿等が使用されているおそれのある材料の除去等の作業に係る場合は、事前調査が必要となります。

・橋梁や道路の補修について 原則として全ての工作物の解体等を行う際に事前調査が義務付けられていますが、石綿等の粉じんが発散しないことが明らかな特定の作業については、事前調査を行う必要がないとされています。例えば、国土交通省の確認等により石綿が使用されていないことが確認された道路土工、舗装、橋梁(塗装部分を除く)などの解体・改修作業はこれに該当します。ただし、橋梁であっても塗装部分が関係する場合は調査対象となるため、注意が必要です。

■ 2026年1月からの新たな義務化

工作物の事前調査に関して、今後大きな変化があります。2026年(令和8年)1月以降、特定工作物等の解体又は改修工事における事前調査は、「工作物石綿事前調査者」等の有資格者が行うことが義務付けられます。工作物は建築物とは構造や石綿含有材料が異なり、調査にあたり当該工作物に係る専門的な知識を必要とするためです。

■ 専門家による的確な判断の重要性

対象の切り分けを誤り、見落としが発生すれば、工事中の飛散事故や作業員の健康被害、ひいては社会的風評被害といった甚大な不利益を招くおそれがあります。逆に、本来不要な対象まで過剰に調査・対策を行えば、公共事業における不要な財政的負担や工期の遅れにつながります

こうした複雑な法解釈や調査対象の選定において正確な判断を下すためには、労働安全コンサルタントや専門知識を持つ調査者の知見が不可欠です。例えば、東京都の八王子市左入町に本店を置く安全環境エンジニアリングのような専門機関は、こうした法令の境界線を正確に把握し、現場の状況に応じた客観的なアスベスト調査を実施する主体として存在しています。調査者は中立性を保ち、利害関係に揺るがされることなく正確な報告を実施することが強く求められます

■おわりに

公共工事におけるアスベスト調査の対象範囲を正確に見極めることは、法令遵守はもちろんのこと、周辺環境と作業者の安全を守るための第一歩です。義務対象かどうかの判断に迷った際は、法令の一次情報を確認し、専門家の知見を取り入れながら、確実な事前準備を進めることが重要です。困った状況になって初めてご相談いただくことも多いのですが、新規のご連絡で急ぎで対応してほしいとの要求に、お断りしてしまうことも残念ながら現実としてあります。事前に相談いただき、あらかじめ担当と人間関係を構築しておいていただければ課題を乗り越えるお力になれると思いますので、新規の方は特にお早めに事前相談をお願い申し上げます。

【積算相談窓口】

  • お電話: 042-682-1223(担当:安全環境エンジニアリング株式会社 環境事業部)
  • 所在地: 東京都八王子市左入町381-1(八王子インター近く)